「シリツ」してください

最近読んだ本からささやかな発見です。
僕が大学生の頃からたまに読んでいる田中克彦さんの本「ことばとは何か」160頁より。

ーもう30年ほど前に入院していたとき、私の同室の比較的若い患者さんたちは「手術」のことをだいたいは「シリツ」と言っていた。

とある。そして、「手術」という漢字の知識がひろまることによって『人民の創意発明になる、「シリツ」という立派な単語』が失われていったのだと説明しています。ここでいう創意発明とは、発音しにくい「しゅじゅつ」を「シリツ」と言い換える、ということをさしているのだと思います。30年ほど前っていうのは、ここでは1970年代くらいのことのようです。

こういうことをどう捉えるかっていうことについては、田中克彦先生の本を読めばたいへんわかりやすく面白く、いろいろ考えさせられて、読むたびにたくさんの発見や気づきをいただけます。
僕がここで発見したと言っているのは、これらの本の内容からしたら大変ちっぽけなものです。

「シリツ」と言えば、アレが思い浮かぶ人が多いんではないでしょうか。

「シリツして下さい」

つげ義春「ねじ式」の「先生!シリツして下さい」っていうあの有名なせりふの「シリツ」という単語の部分は、あんがい当時はふつうの言葉だったのだなあと、それを僕らくらいの世代の人が読むと、もともとなかった、シュールさみたいのを余計に加味して味わってしまっているものなのだなあと思ったのです。いずれにせよ僕の推論の域を出ませんけど。
逆に「ねじ式」のほうがルーツってのは、さすがに考えにくいでしょうか。図書館などでがんばって調べれば以外とすぐにはっきりするかもしれません。
あるいはすでにつげ義春研究本とかに出てるかもしれません。